ケナコルト 自主回収
皆さんは、花粉症や関節リウマチなどで
「一発筋肉注射をするだけで すっきりよくなる注射」
というウワサを聞いたことがありませんか?
その注射は、ケナコルト という筋肉注射です。
このたび そのケナコルトが自主回収になりました。
http://www.wic-net.com/search/search1011-4.html
ケナコルトは、ステロイド薬であり、
1:ステロイド量がものすごく多い
2:筋肉注射であり効果が長く続く
という特徴があり、いったん注射してしまうと取り消しができません。
つまり、ステロイドの副作用が非常に強く出る薬なのです。
たとえば、高血圧、胃潰瘍、心筋梗塞後、糖尿病、骨粗鬆症などの
人には使用を避けるべき薬なのです。
昔は、田舎の、あまり勉強熱心でない医師(高齢医師)のなかには
この注射を多用している人が各地にいたようです。
なにしろ すぐ効く、よく効く ということは間違いないのですから。
でもその結果、患者さんはステロイド漬け状態となり、いろいろな
副作用が生じ生涯苦しんだり、骨粗鬆症、骨折などでの寝たきりにもなり
大きな問題となりました。
こういった問題医師は、医師会が諭して現役を引退して
いただいたりしていた、という話はあちこちで耳にしました。
今では、いろいろな薬が進歩してきました。
アレルギー疾患でも、関節リウマチでも、良い治療法があります。
大量ステロイド筋肉注射という治療法は
現在では 通常「やってはいけない」治療 と考えられます。
このため、ステロイド治療に精通している我々専門医でも
ごく限られた特殊な条件の患者にしか使用しません。
専門医でない医師が安易に使用しては 問題が生じる危険があります。
患者さんの側でも
「よく効く注射を一発うって下さい」なんていうのは
非常に危険なのだ、ということを御理解ください。
ケナコルト自主回収を機会に、そうした「注射一発」という考えが
消えてゆくことを願っています。