花粉症では、抗ヒスタミン薬が基本になります。
ところが、抗ヒスタミン薬は 副作用としての眠気 が問題になります。
車の運転をしてはいけない、とされている薬も多いので
用心が必要です。
飲酒運転と同じくらいに反応速度が遅くなる薬も多いのです。
欧米では、抗ヒスタミン薬は鎮静性と非鎮静性の2つに分類します。
鎮静性というのは眠気がくる、非鎮静性は眠気がこない、ということになります。
非鎮静性抗ヒスタミン薬では眠くならないので、
自動車や飛行機の運転も許可されます。
ところが、非鎮静性抗ヒスタミン薬は 日本では2種のみしかありません。
運転する人、学生さんなどはお医者さんに聞いて、
非鎮静性のものを処方してもらってください。
鎮静性抗ヒスタミン薬では、
自覚的には眠気を感じていなくても 脳の働きは落ちている、
ということも わかっています。
どうして非鎮静性抗ヒスタミン薬では眠くならないのか、という仕組みが
だいぶわかってきました。
本日のお勉強
個別化医療の実現に向けて
薬物副作用を回避する世界最速SNP検出法の開発と臨床応用
アレルギー(日本アレルギー学会誌 2010年2月)
理化学研究所 石川智久 先生ほか
要点
個々の遺伝子多型に基づくテーラーメイド医療(個別化医療)が期待されている。
とくに薬の効果や副作用の可能性を予測することは必須である。
理化学研究所は世界最速の一塩基多型検出技術SmartAmp法を開発した。
病院で受け付けし、内科医師の診察の前までには遺伝子検査結果が出ていて、
それによって薬の種類と量を決めることができる、という時代が来ようとしている。
この論文を読んでコメントをするには、
テーラーメイド医療全般について触れるのが本題なのでしょうが、
抗ヒスタミン薬についての部分のみ御紹介します。
眠くならない抗ヒスタミン薬 フェキソフェナジン のワケが明らかになってきています。
薬物トランスポータ蛋白ABCB1に基質として認識され、中枢神経系から積極的に排出されていることが明らかになってきたのです。
そこで、ABCB1の一塩基多型を検出することが注目されている、というわけです。
平成15年頃の時点では、
私どもが 眠くならない・中枢神経系に影響の少ない抗ヒスタミン薬が重要だ、
という話を学会で発表しても
あまり耳鼻科系の先生には 取り合ってもらえませんでした。
(アトピー性皮膚炎の子供の多い皮膚科の先生には 理解してもらえましたが)
なぜ眠くならないのか、という理屈が わかっていないから、
というのが その背景にあったと思います。
でも、
今では眠くならない機序が明らかとなってきましたし、
個人個人の遺伝子を調べることで副作用の程度も予測が可能になってきました。
わずか5-6年のことですが、医学は急速に進歩している、と感じます。
とにもかくにも
脳の働きの低下を避けたい人(運転する人、学生とくに受験生など)は
診察室でちゃんとそのように申し出てください。
また、自分が服用している薬は 運転してよい薬なのかどうか、
医師に、薬剤師に 必ず確認してくださいね。
繰り返しますが、日本には非鎮静性の抗ヒスタミン薬は 2つしかありません。
それ以外の薬を使用して本番の入学試験で頭がうまく回転せず
不本意な成績に終わったとしても
非鎮静性抗ヒスタミン薬を使わなかった人の自己責任、 ですよ。
写真は公園散歩中のジャムくん。
まぶしいなあ。目を細めています。
白内障がありそうです。老犬のジャムくん。
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