12月8日放送のNHKテレビ「ためしてガッテン」で
糖尿病 「夢の新薬」 であるかのようなニュアンスで放送されました。
じつは現場はちょっと迷惑しています。
また懲りずに「あおり」番組かよ、と。
http://cgi4.nhk.or.jp/gatten/archive/program.cgi?p_id=P20101208
昨日は吉島病院オープンカンファレンスでした。
講師は広島大学教授 山根公則先生でしたので参加してきました。
講演内容は糖尿病の最新のお話でした。
きょうはそれを踏まえてのお話です。
「先日のテレビをみたが、すごく良い薬らしい、
私にもぜひ使ってもらいたい」、
という相談がけっこう多いのです。
私のクリニックのように糖尿病患者が多くない所でそうなのですから、
糖尿病クリニックや病院の糖尿病外来は
問い合わせへの対応、説明で大変な状況だろうな、と思います。
今回テレビで紹介された薬は、インクレチン関連薬という薬で
すでに市販されており、どこの医療機関でも処方できます。
薬の働きとして、
日本人に多いタイプの糖尿病に有効である、
体重増加をきたしにくい、
理論的には低血糖はおこさない(はず)、
というメリットが期待されます。
そういう意味では確かに夢の新薬と言えるでしょう。
しかし、実際には
問題点がかなりあります。
高齢者や腎機能低下者、経過の長い人には使用しにくい、
インスリンが必要な人には使用できない、
他の血糖降下剤を併用していると低血糖をおこすこともある
(低血糖を起こす率は、併用薬にもよるが5%程度のことがある、
また重篤な低血糖として昏睡になる例も報告されています)、
そのほか
ふつうの血糖降下剤にはみられない特殊な副作用もある。
(例:日光皮膚炎はかなり重いものが出ることがあります。
当院では日光皮膚炎のために投与中止になった人もいます。)
保険が適用できる併用薬(条件)が規定されていて
それに該当しない場合には処方はできません。
薬そのものはかなり高額です。
番組を見てはいないのですが、
こういった副作用情報について、番組では触れたのでしょうか?
少なくとも万人に勧められる薬ではないのです。
日本糖尿病学会ホームページ 緊急情報
http://www.jds.or.jp/jds_or_jp0/uploads/photos/666.pdf
重篤な副作用の発生を受け、厚生労働省から5月に添付文書改訂の指示が出されています。
薬の機序からすると
食後の高血糖をおさえる、というのが主な働きです。
その目的の薬なら、すでにずいぶん前から使用されています。
インクレチン関連薬の血糖降下作用は、
以前からある即効性血糖降下剤と そう変わらない、
という学会報告も相次いでいるそうです。
つまり、
効果も思ったほどではない、
副作用も全然ないわけではない、重い低血糖もある、
ということが現在検証されつつある薬なのです。
学会等でも、この薬の位置づけはまだ確立されていないようです。
NHKが番組で取り上げ推奨するのは、まだ早すぎるように思えます。
おそらく間違いのない範囲の話として、
糖尿病になって、まだ早い段階の人、
まだ軽い段階の人にとっては
インクレチン関連薬はとても役立つ可能性があります。
あてはまる方は担当医師に御相談ください。
でも、
でも、
この番組でも伝えられたように
ほんの少しでもいいから体重を落とすこと。
これが実はとっても大切なんです。
食事療法・運動療法が基本ですよ!
写真は己斐の山頂、無線台。
昨日午後から用事があって己斐峠のほうに行きました。
スタッドレスにはきかえた車で、
雪があるかとビビリながら行きましたが、雪は全くありませんでした。
今日は雪はどうでしょうかね?
★インフルエンザ情報
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