本日は食中毒の続きを書こうとしていたのですが、
昨夜のNHK9時のニュースがひどかったので
そちらを書きます。
番組の構成として
1:国の医療費が年々増加してきていること、
2:医療費削減の意味もあり、入院期間短縮という国の方針が強化されたこと、
それにより
3:まだ病院に入院を続けたいのに退院/転院を余儀なくされる患者がいること、
という流れでした。
問題は3番ですね。
まだ病院にいたいのに・・・
という点だけを取り上げれば、
簡単に「お涙頂戴の物語」に仕立てることができます。
情緒だけに訴えれば、そういう番組はすぐできます。
昨日紹介された患者は
高齢で気管切開・人工呼吸器がついていて
すでに10か月の入院期間になっている人。
状態は安定したので、退院しましょう、という話になった。
ところが
家族は体が弱かったり仕事で不在だったりするために
家族で介護することが難しい。
お金(年金)も少ない。
そこで病院の担当者が探し回って
ようやく自宅から3時間の隣県の施設に入ることになった、
というものです。
本人は、どう思っている?
本人の希望は??
この特集で一番違和感があったのは
本人の希望・意見が全く出てこずに、
家族の事情だけで話がすすんでいったこと、です。
施設に向かう車を、自宅の前を通ってもらい、
「お父さん、あれが うち(自宅)だよ」
と一目見せてあげる、という場面が出てきて
これもお涙ちょうだいの場面です。
でも
本人は自宅に帰りたかったのではないのでしょうか?
本人が入院/施設を希望されたのならば それでいいです。
でも
自宅に戻りたい、という希望があるのならば
それをかなえる方法はあります。
24時間対応の在宅医・訪問看護ステーションもあるし
夜間巡回型のヘルパーステーションもあります。
自宅で在宅酸素も在宅人工呼吸療法も可能です。
家で何かあったら不安、と言われる方も多いです。
人工呼吸器が装着されている状況ですから
肺炎をおこす可能性はありそうですね。
肺炎の治療としては、
抗生物質の点滴がおこなわれます。
これも在宅で可能です。
最初に使う抗生物質が効かなければ、
次にもっと強い薬、あるいは2種類の併用で治療となります。
それでも効かなければ、それは残念ながら医療の限界と言える状況。
病院に入院していたところで、肺炎で亡くなられる人も多いのです。
なにしろ肺炎は死亡原因の第4位なのですから。
ですから、
「在宅で、標準的な治療をおこなって、
それでダメなら寿命として受け入れる」、
と家族が腹をくくりさせすれば
在宅での生活を最期まで続けることは出来るのです。
高齢で、気管切開もして、人工呼吸治療も続けてきて、
もう精一杯生きてこられた方なのではないでしょうか。
人生の最後の局面になって
家族もろくに見舞いに来られない遠い場所に
たった一人で移り住むことを
本人は果たして希望されるでしょうか?
自宅の畳の上で死にたい、と
本人は思っておられないでしょうか??
以上、
昨夜のNHKニュースの特集は
在宅医からみれば 大いに疑問、大いに不満な内容でした。
もう一つ、大きな問題点は、
地域の急性期病院に入院すべき患者を厳選し、
入院期間を短くしていかないと
今後 団塊の世代が高齢化してきたときに
急性期病院はパンクする、
という話を紹介していなかったことです。
これも今回の特集の大きな欠点だと思います。
心配だからもっと長く入院させてほしい、
と患者・家族が思うことは当然です。
でも、
そうやって入院期間が延び、病院のベッドがふさがってしまうと
次の救急車を受け入れることが出来ません。
救急患者の受け入れ先が決まらず、仕方なく遠方の病院に搬送する、
なんていう事態がひんぱんに生じる時代が
もうすぐやってくるのです。
国は2025年にむけて、医療体制の整備方針を明確に打ち出しているのです。
診療報酬の話は、その方向性に向けてぶら下げられたニンジンの話にすぎません。
「少しでも長く入院を、という気持ちはよくわかるけれども
次の人のためにベッドを空けていただくよう
どうぞ御理解と御協力をお願いします」
と伝えるのが
マスコミの使命であると思います。
細かい点を追加するならば
在宅では医療費自己負担の上限価格が決まっています。
高齢者であれば標準的には月額12000円が上限です。
それ以上は医療費はかかりません。
また、
人工呼吸器が必要なくらいですから身体障害1級に認定されるかもしれません。
そうなると医療費の自己負担額は0円のことが多いです。
また、障害が発生して18か月をすぎれば
障害年金が受け取れることになります。
お金に関して、活用できる制度はいくつもあるのです。
介護保険は利用の1割が自己負担額なんですけどね。
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