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病室でビールOK

タレントの草薙さん、飲酒で、やってしまいました。
酒は飲んでも呑まれるな というように、
楽しく適量をたしなみたいものです。

ところで、病人にとって、アルコールはどうでしょうか?
通常の患者は、入院中の酒・タバコが体に良くないのは当然です。
タバコは病院敷地内 全面禁煙の病院が増えてきましたし、
入院中に飲酒すれば強制退院となります。
どうしても飲酒したければ、外泊して自宅で、となりますが、
それが可能なくらい元気な病状であれば退院できますしね。

しかし、癌など、末期状態にある人にとっては、どうでしょうか?
長く入院されていた方が、 「あー、ビールが飲みたい・・・」。
健康な時は、晩酌の一杯が非常に楽しみであった、と、
昔話といっしょに、今の願いを語ってくださるのです。
しかし、とうてい外出や退院できるような病状ではない・・・。

少量のアルコールは、食欲を増進したり、睡眠をとりやすくしたり
プラスの効果もあります。
私は、こうした末期の患者さんで個室に入っている方については、
飲酒の希望があれば許可していました。
15年前からのことです。
アルコールの害よりも、効果のほうが大きいと考えたからです。
寿命があと数日~数週間の人に対して、飲み物・食べ物を制限する
理由は全くない、と。
まさかビールが許可されるとは思っていなかった患者さんや御家族は
とても驚き、喜んで、そして一番小さなサイズのビール缶を用意されます。
そして翌日 みなさんそろって感謝の言葉を述べられました。
「先生、ほんとうにありがとうございました。」
私が今 緩和ケア医となっている原点のできごとの一つでもあります。

しかし、まだ多くの病院では、入院中の飲酒は禁止されています。
病院 というのが、集団生活の場 である以上は、
規律を保つということも ある意味大切なことでもあります。
大きな組織では臨機応変とはいかない場合もあり、仕方ないことです。

自宅であれば、こういった制限は全く気にしないでよくなります。
寝るのも起きるのも、何を何時に食べるのかも、
そして何を飲むのかも、いつもと同じようにできます。
他人のペースを気にせず、自分の思うように生活できます。
今では、自宅で酸素吸入もできます。点滴注射もできます。
入院中と変わらない医療の提供ができる環境が実現できています。
在宅医療はどんどん進歩しています。
かつての患者さんたちは、今ならきっと「家に帰りたい」と言うことでしょう。

あなたの希望は、何ですか?
あなたの希望を私たちにお伝えください。
あなたが最期まで自分らしく生きること、を支援します。

写真は『フラワーケーキ』と呼ばれるアレンジです。
カーネーション、バラ、ロウソク
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介護に疲れたら

私はタレントの誰がどうしようが、芸能界には全く興味ないのですが、
この事件には 考えさせられるものがあります。

元タレントの清水由貴子さんが、父親の墓前で自殺した事件。
母親の介護 という問題が背景にあるため、22日夜のNHKニュース9が
トップニュースとして取り上げたそうです。
夕刊フジの報道によれば、
母親(84)は、精神疾患と、糖尿病による失明により 要介護5
であった、とのこと。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090423-00000000-ykf-ent

母親の介護のため芸能界を引退し、ほぼ3年。
自殺に至る原因は一つだけとは限らないし
詳しい報道がありませんので 推測しかできませんが、
「介護疲れ」 という言葉が 真っ先に思い浮かびます。

緩和ケアの領域でも、家族に負担がかかることが多く、
我々緩和ケアに携わる人間は 家族にも目を配っています。
家族のケアも大事な仕事であり、みんなそのことをよく知っています。
疲れたなら、 「疲れる~」 「疲れた~」 と遠慮なくボヤいてください。
がまんにがまんを重ね無理をした段階ではなく、
早い段階、笑って言える段階のほうがいいです。
疲れた家族に休んでもらい、リフレッシュしてもらうために
短期間の入院、短期間の入所 という制度もあるのです。
(緩和ケアの領域では、レスパイト入院 と呼んでいます。)
そうして、ぐっすり眠るもよし、温泉やカラオケに行くもよし。
気力体力を復活させて、また介護に当たればよいのです。

疲れたら休む。当たり前のことです。大事なことです。
どうか1人で全部抱え込まないようにしてください。
我々がお役に立ちますので。

写真はジャーマンアイリス。次々に咲きました!
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ぜんそくは治せる

気管支喘息などアレルギー・免疫疾患は、
そういう体質になってしまえば治らない、治すことはできない、
症状をコントロールして安定した日常生活をおくるのが治療目標だ、とされてきました。
しかし、ぜんそくを治すチャンスがあることが 最近わかってきました。

本日のお勉強
ステロイド吸入薬の使い方(成人):コツと落とし穴
アレルギー(日本アレルギー学会) 2009年 58巻2号
仙台気道研究所 田村弦 先生

要点
発症2年以内の喘息患者に吸入ステロイドを投与する早期治療介入が
最も効率の良い治療であることが確立された。

現在、気管支喘息の治療の柱はステロイド吸入療法です。
しかし、発病後だいぶ経過してからの使用(発病後2年以上経過)では、
病気を「治癒」させる力はありません。
喘息を治癒に導くためには、発病早期、発病2年以内、
できれば半年以内にステロイド吸入療法で
しっかり炎症を抑えることが必要だ、ということがわかってきました。
ですから、「どうも喘息かな?」と思うような症状がある時には
できるだけ早く呼吸器専門医あるいはアレルギー専門医を
受診することが重要です。
内科であればどこでも同じ、というわけにはいきません。

治しうるチャンスは2年以内、できれば半年以内です。
その時期を逃さないようにしましょう。
写真はジャーマンアイリス、モミジ
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胡蝶蘭 咲きました

2009年04月22日 ,

当院は、昨年9月にリニューアルし、院長も交代しました。
おかげさまで、
癌の方(手術後や放射線治療後で 治癒している方も含めて)など、
往診や訪問診療の依頼も増えてきて
少しは地域のお役に立てるようになってきたかな、と思っています。

癌ばかりでなく内科一般に対応しますので
何でも御相談ください。

花のあるクリニック を夢見てきました。
クリニックを訪れた方が、花を愛で、明るい気持ちとなり、会話がはずみます。
そうしてまた いろいろな方が、花を持ち寄ってくださいます。
ありがたいことです。
昨年九月にリニューアルオープン御祝で戴いた胡蝶蘭コチョウランが咲きました。
ぜひ花を見にいらしてください。
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消えた年金、重複する請求書

2009年04月21日

薬剤師の高橋裕子です。
昨年届いた「年金特別便」で薬剤師になったあとで厚生年金になってからの年金記録だけしかないことが判明しました。国民年金数年分の記録が消えており、書類を提出しました。
二ヶ月に一度電話で修正できたか確認していましたが、
一年以上たっても何の連絡もナシ!
「まだ手続き中の表示です」とのこと。
また昨年九月からは国民年金になりましたので4月1日付け請求書で過日納付しました。
ところが! 本日またしても国民年金保険料納付書が送られて来ました!
電話をかけること20回以上! やっとつながり事情を説明し
「なぜですか?」
と問えば
「4月13日付けで納付いただいてますね。なぜでしょうか?」という答!
「だから私が聞いているんでしょ?」
「はあ~おしらべして後程、折り返させてください」との返事。
電話番号を伝え待つこと5分。かかって来ました。
結局、本年度分の支払いをした日に発送しているので、止めることができなかった、ということ。
「申し訳ありませんでした。納付いただかなくて結構です。」
だから何? 私って本当に年金大丈夫かい?

本当に、みなさん、年金については
「自分の年金は大丈夫かな? 正しく処理されているかな?」 と
疑ってかかっておいたほうが良さそうですよ。
「まあ大丈夫だろう」 と思わずに、ちゃんと確認することをおすすめします。

写真は、重複して届いた年金納付請求書。
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サバティーニ東京でランチ

2009年04月20日

今回東京に行った目的は もちろん宇宙飛行士友の会出席でしたが
これだけではありませんでした。
19日(日)には、大切な関東の親戚の方々と
お会いすることになっていたのです。

お昼をご一緒しました。
銀座SONYビルのサバティーニ東京で、おすすめランチ でした。
料理について評価するのは、このブログの目的ではありませんので
ここで詳しくは触れません。ぜひご自分でお確かめください。
苦手な食材のある人のパスタは他のものに交換してくれたり、
サービスは良かったですよ。
デザートは2種類を選べます。
写真は いちごのミルフィーユ と カシスムース。
肉料理もパンもデザートもコーヒーも、おいしかったなあ。
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W健太弁当 宇宙飛行士友の会で東京へ

今年、新しい宇宙飛行士が2名決まりました。
油井さんと大西さんです。
彼らを激励する目的で、
過去の宇宙飛行士試験 国内合宿選抜試験受験者の全世代そろった会合が
はじめて企画開催されました。

4月18日(土)東京に向かいました。
院長は若田さん世代(グループの名称は「MS友の会」)の宇宙飛行士試験受験者です。
午前中の診療を終え、今週は重症患者さんがいないことを確認し
広島から新幹線で向かいました。
同じくMS友の会 W先生と一緒の新幹線になりました。

宇宙飛行士友の会では
油井さん大西さんともに来てくださっていました。
またISS(国際宇宙ステーション)滞在中の若田宇宙飛行士から
会場の幹事の携帯に電話がはいり、約10分間通話ができました。
我々は電話に接続された会場スピーカを通して会話を聞きました。
400km上空の宇宙にいるISSの若田さんと、普通に携帯電話で通話できる!!!
会場 およそ80名の参加者は大感激・大感動です。
すごい時代になったものです。

このあたり、ブログに出して良い情報・画像とそうでない情報の判断を
おこなう必要がありますので、また続報をアップいたします。
(宇宙飛行士の肖像権はJAXAがきわめて厳格に管理しています)

で、出してもよい画像。行きの新幹線で食べたW健太弁当です。
栗原健太選手、前田健太選手の好物、からあげやたこ焼きが入っています。
1050円と少し高めですが、一度は食べてみたかった。おいしいです。
メタボの人には、ちょっと野菜不足ですけど、弁当だから仕方ないですね。
あと、栗原選手か前田選手のカードが入っていれば言うことなしですけれど。
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ジェネリック医薬品 不都合な真実

昨日4月17日中国新聞朝刊 地域面で以下のニュースが報じられました。
全国の自治体で初めて国民健康保険加入者の一部に、安価な後発(ジェネリック)医薬品を使った場合の新薬との差額を通知をしている呉市は16日、5カ月間で3400人余りが切り替え、約2000万円の削減効果があったと発表した。 詳しくは以下のHPで。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200904170054.html

ジェネリック医薬品(後発医薬品)はテレビでも盛んに宣伝していますね。
先発医薬品に比べ安いですよ、という内容です。
実際に呉市でPRしたところ、2000万円削減できた、という記事です。
昨今の家計の状況からは、安い薬の需要があることも確かです。

しかし、先発品と後発品が同じであるならば それでいいのですが、
我々医療者は、「先発品と後発品が同じ」とは思っていません。
我々が懸念しているのは主に2点です。
1:後発品での効果・副作用が同じだという保証がない。
後発品では効果が低く、副作用が多いと思われる。
2:後発品が安いのは、研究開発費や安全性検査を省略しているためである。後発品が売
れれば売れるほど先発品が売れなくなる。次世代の薬を開発するのは先発品メーカー
なので、先発品が売れなければ研究開発の予算がなくなる。つまり次世代の薬が開発
されなくなり、社会全体にとって最終的には不利益になるのではないか。

このうち2の視点については、社会経済としての医療(医療費)をどう考えるか、という問題になります。もうこれ以上 新薬や新しい検査法・治療法は開発・普及しないでよい(医療費が高くなるのは困る)という意見の方もおられます。

そこで、1の視点について、本日のお勉強

急性好酸球性肺炎軽快後にニコラーゼによる薬剤性好酸球性肺炎を発症した1例
日本呼吸器学会雑誌 2009年3月
大分大学医学部総合内科学第二講座 甲斐直子先生ほか

要点
商品名ニコラーゼというのは、セラペプターゼ製剤の後発医薬品である。
先発品(標準薬品)は商品名ダーゼン。
本例では、ニコラーゼによる薬剤性肺炎でありアレルギー反応陽性だったが、
ダーゼンにはアレルギー反応が認められなかった。
ニコラーゼの添加物は14種類あり、ダーゼンと共通の添加物は4種類のみである。
残り10種類の添加物のどれかが発病に関与した可能性が考えられる。

薬というものは、有効成分だけでできているわけではありません。
薬としての形を保ったりするために、さまざまな添加物が使用されています。
その添加物の種類や量は、先発品と後発品では違うのです。
ですから、本来は後発医薬品であっても安全性試験をすべきなのです。

先発品に比べ後発品では効果が弱いものがある、ということを我々は知っています。
また本例のように、先発品にはない有害事象がおこりうる ということも我々は知っています。
後発品と先発品は同じではない。
しかし、安い薬にはそれなりの危険性がある、ということは一般には報道されません。
もちろんテレビCMでも そんな事は言っていません。

安かろう悪かろう、という言葉があります。
医療の世界では、安かろう悪かろう は避けるべきだ、と思っています。
(後発品の全てを否定するものではありません。
例外的ですが先発品より優れている後発品があることも知っています。)

当院でもジェネリック医薬品を希望されれば、副作用などの説明をおこなったうえ
対応しています。
評判のよいジェネリック、評判の悪いジェネリック、いろいろあります。
当院で、あるいは薬局でご相談ください。

日焼けは皮膚がんのもと 緩和ケア医本日のお勉強

2009年04月17日 ,

暖かくなってきましたね、日中は半袖ですごせるくらいになりました。
この時期、ご注意いただきたいのが紫外線です。
紫外線が強いのは7月8月だと思っている人も多いのですが、
じつは5月頃から 紫外線は相当強いのです。
そこで、本日のお勉強は 紫外線による光老化について。

特集:高齢社会と皮膚疾患
皮膚の老化とその対策
日本医師会雑誌 2009年3月
近畿大学 川田暁先生

要点
皮膚の老化は、内因性老化と外因性老化に分けられる。
内因性老化は遺伝的にプログラムされた老化である。
外因性老化は紫外線障害(=光老化)、環境汚染、喫煙などによる。
光老化の予防にはサンスクリーン剤を含めた遮光が提唱されている。

小麦色の肌、という表現があります。
若くて健康的である、という状況を連想させる言葉です(でした)。
若い人の中には、日焼けサロンなどで あえて日焼けしようとする人もいます。

しかし、ちょっと待った。
日焼けは、皮膚の老化を引き起こします。
しみ、そばかす程度ならまだしも、皮膚癌の原因にもなるのです。
寿命が短かった時代にあっては、日焼けは健康の証であったかもしれません。
皮膚癌になる前に寿命が来るので、問題にする必要はなかったのです。
しかし現代は長寿社会です。
何十年後かに現れてくる疾患のリスクを
今 下げておくことが大切なのです。
現代においては、みごとに日焼けしている人というのは
「光老化の知識がない人。将来皮膚癌の可能性が高い人。」ということを
自らの体で表現している人に ほかなりません。
端的に言えば、「私は健康や癌について無関心です」という看板を掲げながら
歩いているようなものです。
過度の日焼け・紫外線は避けるべきなのです。

正しい知識を身につけましょう。
知識のワクチン=正しい知識が自分や社会を守ります。

写真はボタン(品種名は島の藤)。うす紫色の珍しい花です。
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90代胃がん 手術メリットなし

中国新聞4月15日(水)朝刊 くらし面(16面)で
「90代でも胃がん手術 治療成績良好 学会で報告」 という記事がありました。
ひどい見出し記事なので反論しておきたいと思います。

記事前段として
「90歳以上の胃がん患者の場合に、手術すべきか、患者も家族も医師も迷う。かつては患者本人への負担を考えて見送られることが多かったが、高齢化に伴って手術例が少しずつ増えてきた。」 とあります。
これまでデータがなかったので、迷うわけです。
そこで国立呉医療センターの90代の胃がん患者15名について統計をとってみた。
対象は手術6名(最高95歳)、手術なし(緩和医療のみ)9名です。
ここから導かれた結論は、
1:手術の合併症はなかった。
2:生存率は手術してもしなくても差がなかった。
(手術を受けたグループは肺炎など他の病気による死亡が続いた)

生存率/生存期間に差がないのに、手術治療成績が良好 とは、どういうことなのでしょう?
昔から「手術は成功しました、でも患者は助かりませんでした」という表現があります。もちろんブラックジョークの意味を込めて、の表現ですが。
今の外科医には、まだこのブラックジョークのような発言をされる方がいる ということなのでしょうか。

考えてもみてください。
自分あるいは御家族が90歳を超えて胃がんが見つかったとします。
「治療をどうされますか? 手術されますか? 手術してもしなくても寿命は同じですよ。」
そう言われて、あなただったら手術を受けますか?
手術受ける人なんて誰もいないと思います。
手術で痛い思いをし、術後につらい思いをし、手術による体力消耗などにより最後は肺炎で亡くなる。
手術期間と肺炎期間は入院が必要となり、家で生活する時間はそれだけ短くなる。
手術に関する費用負担もかかる。
生存期間に差がないのであれば、わざわざ手術を受ける利点が見あたりません。
それならば、手術を受けず、これまでどおり家でのんびり生活をおくったほうが 幸せではありませんか。

この記事に私が見出しをつけるとすれば こうなります。
「90代の胃がん 手術受けるメリットなし」

今週の花
ご近所のお庭に咲いたお花を頂きました。
ユキヤナギ、モッコウバラ、アプチロン、フリージア
DVC000240416

082-241-6836(代表)

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