酒のさかな
毎月最終日曜日は心に残る出会いです。
最期の迎え方は、人によってさまざまです。
人生の最期を考えるきっかけにしていただければ、と思っています。
Kさんは85歳。
これまであまり病気せず、
孫たちとも同居して平穏に暮らしていました。
ある日、黄疸が出てきて入院です。
胆管癌による閉塞性黄疸と判明。
すでに肝臓転移などもあり
黄疸改善のための胆管ステントのみ施行されました。
抗がん剤や放射線治療、手術は もう無理です。
食欲がなく点滴ということになったのですが、
腎不全もあり、点滴の調整にも悪戦苦闘していました。
そのうちに
Kさんが
家に帰りたい、
と言うようになりました。
「家に帰ってビールが飲みたい」、と。
病院の担当医は、まだ点滴の調整がうまくいかないので
少し先の退院がいいと考えましたが、
地域連携室や訪問看護の看護師たちは
状態が悪いので帰るならすぐ帰ったほうがいい、
時間がない、と考えました。
そこで退院後の担当として当院に依頼がありました。
当方はもちろんいつからでもOKです。
日曜の休みが明けて帰りましょう、
ということになり、月曜日の午前中に退院です。
ところが
退院の前日からKさんは意識レベルが低下してきていました。
自宅に帰ったのですが、言葉をかけても反応はありません。
退院直後に訪問看護がはいったのですが
血圧も60台と低下しはじめていました。
私たちも退院日の昼には訪問診療し
Kさんとのはじめての出会いです。
やはりもう呼びかけには反応がありません。
尿もほとんど出なくなっていました。
(血圧が下がると尿は出なくなってきます)
楽しみにしていたビールを飲める状態ではありませんでした。
その代わりの方法をみんなで考えて、
口腔ケアをおこなう時にビールを使用してもらうことになりました。
少しは風味が味わえるのではないだろうか、と。
呼びかけに返事も反応もないけれど、
手を握って、耳元でいろんな話・声かけを
してもらうようお話しました。
娘さんたちが手を握って話しかけても反応はありません。
しかし
妻が手を取り語りかけたところ、
その手をぐっと握りかえしてきたそうです。
ああ、それは奥さんだって わかったんですよ。
居合わせたみんながそう思いました。
退院の翌日、Kさんは苦しむことなく自宅で永眠されました。
意識もはっきりしない状態で、
退院して家に帰ることに意味があるのかどうか?
私は、それでも意味はある、と考えています。
家のにおい、光のかげん、室内を吹き抜ける風。
室内や、家の外の音。
住み慣れた環境に戻る、ということは
理屈ではなく体で感じることが出来るものなのです。
そして、住み慣れた環境に戻ることは、安心につながります。
誰だって、疲れてしんどくなったら、早く家に帰りたいですよね。
家に帰ったら、それだけでホッとしますよね。
聴覚は一番最後まで残る、と言われています。
意識がはっきりしていないようにみえても、
聞きなれた奥さんの声がわかる、反応がある、
というKさんのような経験も 多いのです。
癌末期の高齢者は、残された時間は短いです。
状態は急速に悪くなります。
思い立ったら、即日退院のほうがよいです。
土日だから月曜まで待って退院しましょう、なんて考えず
とにかく急ぎましょう。
Kさんも、あと1日早く退院していたら
コップでビールが飲めたかもしれません。
あとで思い返すと、その点だけが残念なことでした。
在宅担当チーム(在宅医や訪問看護ステーションなど)も、
こうした「至急退院」依頼にも対応できるよう
連携強化をしていますよ。
どぜう飯田屋 食べログ
http://tabelog.com/tokyo/A1311/A131102/13003687/
どぜう蒲焼き
家族みんなの意見は、蒲焼はうなぎのほうがオイシイ。
そりゃー、あたりまえか、ということになりました。
ただし、うなぎ蒲焼は出来上がるまで時間がかかるので
酒のアテには早く出来るどぜうがいいです。
★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。