心に残る出会い29 下咽頭癌のKさん
Kさんは75歳。
以前、食道癌の治療を受けています。
今回は下咽頭癌で放射線治療を受け、
食欲不振が続くため、あるホスピスに入院していました。
肺転移や腹部臓器への転移もあり、
かなり進行した状態ではありました。
次第に食欲が回復してきたため退院し
自宅での生活を再開することができました。
(ホスピスに入ったらおしまい、ということではなく、
専門的な緩和ケアで苦痛を軽くすることができれば
また自宅療養に戻れることは 珍しくないことなのです。)
ある日、非常にしんどい、息切れがする、ということで
当院を受診されました。
私たちのはじめての出会いです。
診察すると、明らかな貧血があります。
採血データも非常に悪いので、輸血目的ですぐに日赤病院血液内科を紹介しました。
じつはKさん、食道癌の治療後に、
日赤病院血液内科でMDS(骨髄異形成症候群)と診断され、
以前に何度も輸血を受けたこともあったからです。
日赤病院で輸血・血小板輸血を受け、状態は回復しましたが、
診断は 「MDSの白血化」。
つまり白血病をおこしていたのです。
急な貧血の出現は、そのためでした。
MDSは、白血病化がしばしば生じます。
その段階では輸血と血小板輸血以外には、手の施しようがありません。
当院では、食欲が出るような薬を工夫したり
便通や痛みに対して薬を調整をしたりしていました。
しかし、しんどさもひどくなってきたのでホスピスに再入院することとなりました。
その10日後、Kさんはホスピスで亡くなられました。
あとで御家族に聞いた話では、そのホスピスでは、
「点滴だけで輸血はしないという施設の方針だ」、とのことで
輸血を受けることはなかったそうです。
「末期の状態で輸血をするかどうか」、は
議論のあるところです。
結論は簡単には出せません。
ただ、もし楽になるのであれば「緩和目的の輸血」を
してあげた方がいいと思う場合もあります。
在宅では、輸血するのは少し面倒な手順も必要で
また訪問看護師による輸血も出来ない決まりです。
在宅での輸血は、あまり実際的ではないのです。
でも入院環境であれば輸血は容易なはず。
輸血をしてくれるホスピスもあるはずです。
輸血してくれる施設なのかどうか、
病気の種類によっては入院前に確認されたほうが
いいのかもしれません。
今の医療制度では
ホスピスで輸血をすると赤字になる仕組みとなっています。
「経営的な判断として全員輸血しない」、というホスピスも
あるのかもしれないな、というのが現状なんです。
ほんとうは、一人ひとり「緩和ケアとして」輸血の是非の判断を
していくべきところなのですけれど。
先週の緩和ケア医のランニング姿。
この姿を見たら御用心?
車にはねられないように、
最近では目立つ派手な色のランニングウエアが主流です。
吉島の土手を走っている常連さんのなかに
まったく同じ赤色ウエアの人もいます。
その人はすっごく早いのですよ~。
★インフルエンザ情報
取手の病院でインフル57人感染 90歳代の患者2人死亡
Yomiuri online 1月29日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/ibaraki/news/20120129-OYT8T00010.htm
茨城の病院ですが、
56人がB型がだった、というので ちょっと驚き。
B型は軽症で終わることが多い印象なので。
現在広島で流行しているのはA香港型H3N2です。
A香港は重症化することが多く、それなら理解しやすいのですが。